月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
小野 不由美
「あなたは私の主(あるじ)、お迎えにまいりました」学校にケイキと名のる男が突然、現われて、陽子を連れ去った。海に映る月の光をくぐりぬけ、辿(たど)りついたところは、地図にない国。そして、ここで陽子を待ちうけていたのは、のどかな風景とは裏腹に、闇から躍りでる異形(いぎょう)の獣たちとの戦いだった。「なぜ、あたしをここへ連れてきたの?」陽子を異界へ喚(よ)んだのは誰なのか?帰るあてもない陽子の孤独な旅が、いま始まる!(amazonより)
十二国記シリーズ。
この面白さ、鮮烈さを言葉にするのはとても難しい。
十二国記で印象に残るのは『人の心』でした。
人間であれば誰もが持つ、弱さ、愚かさ、みにくさ、
そして、それを乗り越える強さ。
この最初の巻では、普通の高校生陽子が
いきなり異世界に迷い込む苦悩を描いています。
陽子はどこにでも居そうな女の子。
事なかれ主義で、目立つことを嫌い、争いを避け、その代償に深く人と付き合うことも無い。
そんな陽子がいきなり、異形の獣に襲われ、見知らぬ自分を「主(あるじ)」だと呼ぶ男に異世界に連れ去られます。
異世界にいきなり行く。しかも命を狙われる。頼れる者が誰も居ない。
こんな尋常ではない出来事が数々陽子の身に起こり、陽子の心で生々しい葛藤が始まります。
月の影 影の海 上巻は、人間の醜い部分がたくさん出てくる巻とも言えます。
でも、なんというのでしょう。
この醜さをさらけ出す姿が、とても人間的なのです。
フワフワ生きているような感じだった陽子が、生々しく赤裸々に生きていく。
死んだ方が楽なのではないか?そんな事を思いながらも、
命を惜しみ、飢えに耐え、体の痛みに耐え、不信にあえぎ、確たるあてもなく進む。
シリーズ全体を読み進むに連れて(特に月の影 影の海と風の万里 黎明の空)
『人は変われる、成長できる、学ぶことができる』そう信じる事ができます。
おいらは陽子に信じてもらいたかった。
だから信じてもらえりゃ嬉しいし、信じてもらえなかったら寂しい。
それはおいらの問題。
おいらを信じるのも信じないのも陽子の勝手だ。
おいらを信じて陽子は得をするかもしれねえし、損をするかもしれねえ。
けどそれは陽子の問題だな
あなたはどう思いますか?
人の心のあり方を、深く揺さぶるシリーズです。
以下、出版順に並べてあります。
⇒ カイ (10/19)
⇒ さかい@tadoku.org (10/13)
⇒ カイ (04/21)
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